ゴジラ出現!
戦争と核の恐怖を背景に、ゴジラがスクリーンに登場して60年。米国で今年リメーク版が完成し、日本でもこの夏、公開される。再び脚光を浴びる特撮映画の「元祖」に、いまという時代の危うさを重ねる人たちがいる。
■「悲惨さ共感できた国、どこに」
1954年公開の1作目に主演した俳優宝田明さん(80)は今年、30を超すメディアの取材を受けた。1本も断っていない。戦争を知る世代として、いま感じる「きな臭さ」も一緒に伝えたいと思うからだ。
「戦争の悲惨さを描いたゴジラに共感できたあの国は、どこにいったのか」
初代ゴジラは水爆実験で目覚め、安住の地を追われ日本に出現したという設定だ。東京の街を破壊し、放射能をまき散らす。逃げ惑う民衆は、かつての空襲や原爆の恐怖を思い出す――。そんな様子を描いた。この年の3月、米国の水爆実験で被曝(ひばく)した第五福竜丸事件があった。「民衆が戦争といった暴力にあったとき、いかに徹底的にいじめられるか、片鱗(へんりん)だけでも出れば」。監督した故・本多猪四郎(いしろう)さんは生前、こう記した。
第2次世界大戦の敗北から9年。朝鮮戦争の特需で日本は高度経済成長期の入り口にあった。「路上の傷痍(しょうい)軍人も減り、戦争の影が薄れつつあった」と、宝田さんは振り返る。そんな時代だったからこそ、961万人を動員する大ヒットになったと思う。
「戦時中に体で感じた恐怖を思い出させたのが、ゴジラだった。アンチ戦争のメッセージに共感させるだけの力があった」
宝田さんは11歳のとき、旧満州(中国東北部)で終戦を迎えた。侵攻してきた旧ソ連軍に腹を撃たれ、麻酔なしで弾を取り出した。若い女性がソ連兵に連れ去られるところも鮮明に覚えている。傷痕はいまもうずく。
十分な議論もなく、着々と集団的自衛権の行使容認に突き進む政治が怖いという。「あのときも一部の人たちの判断で国のかたちが変わってしまった。立場の弱い人が蹂躙(じゅうりん)されるのが戦争。あんなこと、もう誰にも経験してほしくない」
■「人は制御できぬもの扱うな」
71年の「ゴジラ対ヘドラ」に、社会問題になっていた公害を取り入れたのは、監督の坂野(ばんの)義光さん(83)だ。ヘドロから生まれた怪獣ヘドラは、有害物質をばらまき、人間を溶かす。自然をないがしろにする社会への警告を込めた。
パビリオンの映像制作でかかわった前年の大阪万博で、東京と往復するなか、静岡県・田子の浦港のヘドロ公害を目にした。原因は工場排水だった。人類の進歩をたたえる万博の裏にある現実に衝撃を受けた。
今月8日、ハリウッドであった米国版ゴジラの試写会「ワールドプレミア」に招かれた。原発事故が描かれていた。「人間はコントロールできないものを扱うべきじゃない」と語るギャレス・エドワーズ監督に共感した。
米国版ができる前、自身も東京電力福島第一原発の汚染水から生まれた怪獣の映画を企画書にまとめて、映画会社などに送っていた。「私たちは事故から何を学んだのか。二度と事故を起こさない道は、原発を無くすことだ。ゴジラの警告はいつ人間に届くのか」
文芸評論家の加藤典洋さん(66)はゴジラを「戦死者の亡霊」という。早稲田大を退職するこの春まで、第1作を戦後史の授業で取り上げてきた。過去と向き合い、なぜ誤ったのかを考え抜く大切さを伝えるためだった。
ここ数年、「過去の過ちを認めることこそが強さだ」ということを、学生に伝えることの困難さが強まったという。若者が保守的になったと感じている。ネット右翼やヘイトスピーチとも根底で通じていると考える。
「戦争の苦しさが忘れられようとしている。ゴジラが日本に戻ってきたら、『自分の死はいったいなんだったのだ』と怒るのではないだろうか」(東郷隆)
■初代ゴジラに映る「戦争の記憶」
◎ゴジラが放射能をまき散らしていると国会で報告を受け、政治家が「軽率に公表した暁には国民大衆を恐怖に陥れ、ひいては政治、経済、外交まで混乱を引き起こす」。それを聞いた別の女性議員が「ばかもの! 事実は堂々と公表しろ」。
◎ゴジラの存在が新聞で報道され、女性が「いやね、原子マグロだ放射能の雨だ、そのうえ今度はゴジラときたわ。せっかく長崎の原爆から命拾いしてきた、大切な体なんだもの」。別の男性が応じる。「ああ、また疎開か、いやだなあ」
◎核兵器を 超える残忍な新兵器を開発した科学者が使用を尻ごみし、「もしもいったん(新兵器の)オキシジェン・デストロイヤーを使ったが最後、世界の為政者が黙って 見ているはずがないんだ。必ずこれを武器として使用するに決まっている。原爆対原爆、水爆対水爆、その上さらにこの新しい武器を人類の上に加えることは科 学者として、いや、一個の人間として許すわけにはいかない」。
<ゴジラ> 1954年から2004年までに28作品制作され、キングギドラやモスラなど数々の怪獣が登場した。国内の観客動員数は累計9975万人。邦画のシリーズ物では「ドラえもん」に次ぐ。98年には初のハリウッド版も作られた。日本初の怪獣特撮映画となった1作目はデジタルリマスター版が6月7日から上映される。米国版最新作の日本公開は7月25日。
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↑ 以上朝日新聞デジタルからの引用でした。
1954年というと、私はまだ5歳で幼稚園にも行っていなかった。
以後私は、アンギラスもキングギドラもモスラも知っている。モスラのときの南海の孤島の妖精役はあのザ・ピーナツだった。彼女たちが歌うとモスラはやって来るのだった。
最初のうちモスラは善玉でゴジラは悪役だったが、宇宙からキングギドラが来襲してからはゴジラも地球防衛のための善玉に変身した。
最初に出てからは早60年も経ているのか。
世の中はますます悪くなっているように思われる。
以下は日刊ゲンダイからの引用です。 ↓
朝日、日経、テレ東…いずれの調査でも解釈改憲「反対」過半数
- 2014年5月26日
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この週末の世論調査でも「反対」が圧倒的だった。安倍首相が目指す憲法の解釈変更による集団的自衛権の行使容認について、朝日新聞が24、25日に実施した世論調査では「賛成」が29%で、「反対」が55%だった。
日経新聞とテレビ東京が23~25日に行った世論調査でも「賛成」は28%で、「反対」が51%だった。
日経新聞の4月の前回調査では、安倍が憲法の解釈変更に意欲を示していることに38%が「賛成」と答えていたから、安倍の“紙芝居会見”を見て、「反対」が増えたことになる。
安倍が憲法改正の手続きを踏まず、内閣の判断で憲法解釈を変える進め方をとっていることについては、朝日新聞の調査で、「適切だ」が18%に対し、「適切ではない」が67%だった。
朝日、日経、テレ東…いずれの調査でも解釈改憲「反対」過半数
- 2014年5月26日
世論調査は設問によって回答に差が出るものの、どう質問しようが安倍の解釈改憲に国民が懐疑的なのは間違いない。
一方、ANNの世論調査(24、25日)では、安倍内閣の支持率が過去最低を更新した。「支持する」は45.7%で前回調査から12.3ポイントも急落した。これまでの最低は去年7月の46.4%だった。